第59章 彼に面子を立てる

彼は湯呑みを置いた。さっきまでの傲慢さが、商売人らしい丸さへとすり替わる。

「黒谷社長がわざわざお越しくださったんだ。そりゃ俺も顔を立てないとな。さあさあ、突っ立ってないで。来た以上は客だ。座って、食いながら話そうじゃないか」

手を振ってボディーガードを下がらせ、店員に合図して料理を仕切り直させた。

「当時のことはな……語り出すと長い。お二人がそこまで興味あるってんなら、少しだけ“匂わせて”やるよ」

林田英治は席を勧めるように掌を向けた。目は笑っているのに、奥は計算でぎらついている。

「ただし黒谷社長。先に言っとくが、知ったところで得にならない話もある。ほんとにその泥水、踏み込む気...

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